NW屋的日常徒然日記

ネットワークを専門にする元社内SEの日常とITネタ諸々を綴って行きます。

旭川医大vsNTT東日本の電子カルテシステム導入頓挫事件をさらに追う(2)・単年度予算が元凶か?

 こんばんは。昨日は旭川医大vsNTT東日本の電子カルテシステム導入頓挫事件に関しての続きを書きました。こちらです。

karasuma-kitaoji.hatenablog.com

 この中で触れた@IT側の記事では、「システム開発前にユーザとベンダが1年ほどかけて勉強会を行う」という提案があります。これを馬鹿正直に額面通りに捉えたとします。勉強会に加えて、実際のシステム構築を行うとすると、2年近くかかることになります。

 官公庁や独法等が抱える根本的問題に直面することになります

 「事前勉強会は有用だよなぁ」と、昨日記事を書いた時点では思ってました。ここで引っかかったのが「旭川医大国立大学法人だよなぁ…」という点でした。

 国立大学法人独立行政法人地方独立行政法人を含む)や官公庁は単年度予算編成ですよね。ここがネックになってくるんじゃないでしょうか。「3/31までに納品して検収終わらせるようにしてね♪」があると、年度を跨いだシステム構築が出来ないんじゃないかと。

 となると、1年かけた勉強会など夢のまた夢になりそうです。勉強会とシステム構築を別々に入札しないといけないというようなおかしな事態も発生しそうです。両者が同一ベンダならいいんですが、別々のベンダが落札するようなことになったら目も当てられません。(^^;

 ということは、複数年度に跨る勉強会+システム構築を同一ベンダで落とせるような入札の仕方が必要になってくることになります。これはこれで別の事務的テクニックが必要だという話になります。この点で挫折してしまったのも、頓挫の要因の一つなのかなとも思えてきました。

 「発注者責任」とは言うものの…

 次はITproの記事についてです。こちらは発注者責任を謳っておられます。一般論としては極めて正論だと思います。しかし、医療機関での医師と事務職(情報関係専門職もこちらに含めるものとします)の力関係は圧倒的に前者の方が強大です。後者に関しては、前者に比べて医療に関する知識が乏しいのが現実です。どうしても強く出られない現状があります。現状では情報システム部が「発注窓口係」に成り下がらざるを得ない不幸な面があります。

 で、これを解消するとなると、以前も書きましたように、情報システム部に医師免許持ちのSEを採用しないと解消しないんじゃないかという話になりそうです。ただ、院内の医師を兼務で情報システム部に所属させるというのは解決策にはならないと思います。本籍は医局側なので、最終的局面では医局側のスタンスで対応するのではないかと考えられます。

 やはり要ると思うんですよ。情報システム部に医学部卒のSEが

 結局ここに帰着するんでしょうね。医師(医局か?)と情報システム部が対等にやり合えるようにするには、医学部卒のSEが要るんでしょうね。情報システム部には。医師免許のない博士号(医学)持ちのSEでもいいかと思います。「医師免許持ってないんか」と思われるかもしれませんが、医療情報学で博士号を持っていると、医師側も認めてくれるのではないかと思います。(私自身は博士号持ちではないですが(^^;)

 情報システム部にもベンダにも院内の医師に張り合えるように、医師(あるいはそれに準じる人材)が必要なんだなと確信しました。