NW屋的日常徒然日記

ネットワークを専門にする元社内SEの日常とITネタ諸々を綴って行きます。

「ユーザー=お客様」という立ち位置がシステム導入では通用しないんじゃないか?という判決

 こんばんは。今回はシステム導入に関するベンダとユーザーの間の揉め事の顛末についてです。以下はITproの記事からです。

itpro.nikkeibp.co.jp

「簡単に出来るでしょ?」という意識が追加要望連発の原因?

 旭川医大電子カルテ更新を実施するために入札を行い、NTT東日本が落札しました。それから電子カルテ更新に向けた一連の作業が始まるわけですが、ここにいろいろ問題がありました。一般的には、落札した時点での仕様書に基づいてシステム導入が行われるわけですが、ここで旭川医大側が追加開発の要求を連発したそうです。

 まぁ、ありがちなお話ですねぇ。私自身もユーザー側の立場で電子カルテ導入に関わったことがあります。追加要望ってのは多いんですよね。ええ。

 よく使われる喩えで、ラーメン屋で味噌ラーメンを注文しておいて、後からチャーシューやコーンや煮卵を追加注文したりする様子が挙げられることがあります。これだけならまだいい方で、注文の品が出てくる直前で豚骨ラーメンに変更したり、追加料金は払わないと言い出したりするようなものだという酷い喩えもあります。

 飲食店なら「こんなふざけたことはあり得ない」と言われるようなことでも、システム開発界隈では往々にして起こり得ることなんですよね…。orz

 この記事では、さらに病院側とベンダ側との会議で現行システムの機能継承をある医師が声高に要求し、他の医師も同調したのだそうです。結果、追加要求をベンダ側は飲み、稼働時期延期で合意したとあります。

 医療業界の特殊性もあるかもしれませんが

 他の業界がどうかは分かりませんが、医療機関の場合は医師の力が強いという事情もあります。しかも声の大きい医師がいると、そちら側に引きずられることも往々にしてあります。そのため、どうしてもベンダ側が一方的に叩かれる(要求を飲まされる)というような形になることが多いです。と、日頃から「先生、先生」と持ち上げられることも多いですし、偏差値社会のチャンピオンですから、高圧的な態度に出る方が多くなる傾向にあります。(もちろん、低姿勢で理解のある先生方も多いのも事実です)

 他の業界でも大なり小なりあるかもしれませんが、電子カルテシステムの場合は特に「医療のプロがベンダ側にいない」ということが大きいように思います。発注者側である病院(≒医師)側から見た場合に「医療を知らないド素人風情が」と映るのかもしれません。確かにベンダ側に医師免許を持ったSEがいるというような話を聞いたことがありません。(逆に病院側にIT関係の高度な資格を持ったSEも少ないということもありますが、これらについては別の機会に書くことにします。)

 発注者側としても、「ITには詳しいだろうけど、本当の医療現場を知らない者が作ったシステムは正直どうなのだろうか?」という気持ちがあるのかもしれません。これを解消するには、ベンダ側に医師経験者や看護師経験者などをヘッドハントしてSEとするか、医療情報学で博士号(医学)を持ったSEを自前養成するか、ヘッドハントするかなんだろうと思います。

 その前に、IT関係のエンジニアの待遇を大幅に向上させる必要があるのは間違いなさそうです。

 忘れてはいけない4つのポイント

 さて、今回の判決を受けて、重要なことは

  • 発注の時点で追加要望が出ないように仕様を確定させる
  • ベンダ側も無茶振りには毅然とした態度で断る
  • 追加要望には相応のコストと時間が発生する
  • 「お客様」ではなく、一緒にシステムを構築する気持ちで臨む

 あたりでしょうか。これらが徹底されれば少しは変わるかもしれませんね。